私だけの神様になった彼女の話

小学校5年生くらいから、とあるブログサイトに入り浸っていた。

そこで出会ったひとりの女性がいた。
当時の感覚だと、女の子、の方がいいのかもしれない。

確か、3つくらい年上だった。

彼女はハンドルネームを何度も変えて、Aになって、Kになって、Mになった。

彼女は母親から虐待を受けていた。
その母親は離婚と再婚を繰り返し、父親は、確か5人くらい入れ替わったのかな。

義務教育期間は、とにかく世界が狭い。

自分が世界で1番不幸だと思っていた私にとって、彼女との出会いは衝撃的なものだった。

彼女は、当時の私にとって、家族の不和について話せる唯一の存在となった。

「昨日あいつがまた包丁持って脅してきてさーw」なんて、ケラケラ笑いながら話せるのが、とても楽しかった。
これは「メンヘラw」と一蹴されてしまうんだろうが、自傷行為を行った後の写真を送りあったりもした。 

2人ともカラオケが好きだったから、Skypeを繋いで遠隔カラオケをしたりなんかもした。

彼女がレイプ被害に遭い妊娠、堕胎し、毎日毎日水子の夢を見ていた時は、毎日毎日電話をした。

私が高校を出たら、家族から逃げて、一緒に住もうという約束もした。

そんな約束叶うわけないって本当はわかっていたけど、少し先の将来に希望を抱かせてくれたあの約束は、確かな救いになった。

もう少し、頑張って生きようと思わせてくれた。

私より年上の彼女は、先に地元の岡山で就職した。

結局私は、高校を出たら東京でひとり暮らしを始めた。

2014年の10月、大阪府に行くことになった。初めての関西。

出会ってから6年ごしに、会う約束をした。
彼女が住むのは岡山県。大阪まで出てきてくれると言った。
1週間前には、当日来て行く服の写真を交換した。

前日になって、仕事が忙しくて行けない、という連絡が来た。

2016年の5月、岡山県に行くことになった。彼女が住む土地だ。

出会ってから8年ごしに、会う約束をした。
一緒にデミカツ丼を食べようと話していた。
1週間前には、当日来て行く服の写真を交換した。

前日になって、仕事が忙しくて行けない、という連絡が来た。

結局、その後も機会はなく、一度も会うことは叶わなかった。

もしかしたら、最初からそこまで本気で会うつもりなんてなかったのかもしれない。

でも、一度も会わなければ、彼女はどこまでも私の中の幻想でいてくれるから、私を救ってくれた神様になってくれるから、これでよかったのかもしれない。
当時の私は彼女の存在に縋り付いていたし、間違いなく信仰の対象にまで昇格させてしまっていた。

義務教育期間は、とにかく世界が狭い。

インターネットと、それに付随する出会いは、確実に私の世界を広げてくれたし、あの多感な時期にインターネットに出会えたことは、本当に救いだったし、恵まれていたと思う。

私は今、Webデザイナーという仕事をしている。
別にそんなつもりはなく、なし崩しになってしまった職種だけど、私を生かしてくれたインターネットに関わる仕事をするようになったのは必然だったのかもしれない。

彼女とは2019年1月以降、連絡をとっていない。
その連絡手段もフォロワーが数人しかいないTwitterの鍵アカウントで、もはや連絡が通じるのかもわからない。

不思議と、もうわざわざ連絡を取ろう、とも思わなくなった。

ただ、生きていてくれたら嬉しい、と思う。

最近の記事

👆